キャッシングと総量規制の関係

クレジットカードを使ってお金を借りることができるのがキャッシング機能です。その機能には、いくらまでお金を借りる事ができますという”キャッシング枠”というものが設定されています。その範囲内であれば、コンビニのATMで自由に現金を引き出す事ができるため、ちょっとした時に便利です。

クレジットカードが何枚もあれば、その枚数分だけキャッシング枠が設定されています。限度額が30万円のカードを4枚持っていれば、それだけで120万円分の枠があることになります。これは総量規制の対象にならないのでしょうか?

実は、総量規制というのは現在借りている金額だけを対象としています。つまり、枠がいくらあっても1円も借りていなければ全然問題ないのです。総量規制というのは、年収の1/3以上は借りる事ができないという法律です。例えば年収が300万円であれば借りられるお金は100万円までです。その人に120万円の枠があると一見矛盾していることになってしまいます。それでも、現時点では問題ないとされているのです。

つまり、すべてのクレジットカードで30万円ずつキャッシングすれば、それだけで総量規制以上のお金を借りる事が可能ということです。しかし、カード会社によってはその都度信用情報を確認することもありますので、その時点で年収の1/3以上を借りていたらキャッシング機能は停止します。

それ以外にも、カード会社は定期的に枠の見直しを行っています。契約更新などのタイミングで総量規制以上のお金を借りていた場合は、その時点で限度枠が見直されることになります。

キャッシングしていても新規ローンで借りられる?

今の時点でキャッシング機能を使ってお金を借りていた場合、新規でローンを組めるのでしょうか?それを調べるためには、総量規制が大きく関係してきます。まず知っておきたいのが、現在いくらの借入をしているかということです。クレジットカードのキャッシング機能やカードローンをいくら使っているのかが重要です。

もし、年収が300万円ですでに100万円以上のお金を借りていたとすれば、もう新規でローンを組むことはできません。新たにクレジットカードを作ったとしても、キャッシング枠は0円に設定されてしまいます。これは新規カードを申し込んだ際に、カード会社が個人信用情報機関をチェックするからです。そこには、申込者が現在どこからいくら借入しているかがすべて分かるようになっているのです。そこで、これ以上の貸し出しはできないと判断されてしまうのです。

逆に、同じく年収が300万円であっても、現在1円も借りていなければ100万円までお金を借りられます。新規でカードローンなどに申し込みをしても、100万円までの限度額が与えられます。例え、クレジットカードの枠が100万円以上あっても、借りていなければ問題ないのです。

しかし、いきなり100万円の限度額が与えられる可能性は極めて低いでしょう。各金融業者は、最初は10万円程度の貸し出ししかしてくれません。そこから何度か借りて返す事を繰り返すと、信用度が上がっていきます。すると増枠ができるようになり、徐々に限度額が上げられるのです。その限界額が年収の1/3までとなります。

つまり、あといくら借りられるかというのは個人の年収や勤続年数、年間返済額などによるのです。ケースバイケースということなので、自分がいくらのお金を借りているのかを一度確認する事が大事です。その上で、総量規制まで余裕があればまだ借りられますし、そうでなければこれ以上の借入は不可となります。

総量規制に関係ないローンは?

そもそも、総量規制というのは多重債務者が増えすぎたために制定された法律です。際限なくお金が借りられた時代に、無理な融資が横行しました。年収以上の借金は返せるはずもなく、自己破産をする人が耐えなかったのです。そうした状況を解決するために、無理なく借金が返済できるボーダーラインを”年収の1/3”としたのです。

非常に理にかなった限度額ではありますが、時には総量規制以上のお金が必要になることもあります。そうした時のために、特例が設けられているのです。その中でも有名なのが自動車ローンや住宅ローンです。家や車は年収以上の買い物が当たり前のため、これらは除外しようと決まっているのです。もちろん、その他にも対象外となっているものがあるのでここで確認しておきましょう。

  • 高額療養費の借り入れ
  • 緊急の医療費の借り入れ
  • 申込者が一方的に有利となる借換え
  • 配偶者との年収合算(合算で3分の1までなら対象外)
  • 個人事業者の借り入れ
  • 預金取り扱いの金融機関から融資を受けるまでの“つなぎ資金”

これらの理由であれば、年収の1/3を超えるお金を借りることができます。

中でも知っておきたいのが3つ目の「申込者が一方的に有利となる借換え」です。これはつまり、おまとめローンの事を指します。おまとめローンとは、複数の金融機関から借入をしてしまい、多重債務状態となっているものを1本化するローンのことです。少額を数社から借り入れるよりも、高額を1社から借り入れたほうが金利が下がります。これは利息制限法によるものなので、おまとめローンは大抵の場合負債額を減らすことができます。借金に苦しんでいる状態から開放してくれるものなので、”申込者に一方的に有利”とされているのです。

総量規制は消費者金融に対して適用される法律ですが、おまとめローンであれば消費者金融も特例的に多額の貸し出しを許可されます。

クレジットカードはどうするべき?

総量規制という法律があるのであれば、そこに引っかからないようにお金を借りなければいけません。そのためには、クレジットカードをどう使うのが賢いのかを知っておきましょう。

クレジットカードには「ショッピング枠」「キャッシング枠」の2種類があり、それをまとめて「総枠」としています。ショッピング枠は食事や買い物の支払い時にクレジットカードを提示して、後日まとめて支払うという使い方をします。これは、割賦販売法という法律が適用されるため、総量規制の対象外です。つまり、50万円分の買い物をしたとしても、借りられるお金に変更はありません。

対するキャッシング枠は、クレジットカードをATMに入れて現金を引き出す方法です。カードローンとまったく同じ使い方をするため、貸金業者が適用されます。そのため総量規制の対象となるのです。

これらを理解すれば、クレジットカードの賢い使い方がわかってきます。クレジットカード払いができる買い物はすべてショッピング枠で済ませてしまい、現金のみの支払いが求められる場合だけキャッシングを利用するのが総枠を最大限活用できる方法です。

ただし、クレジットカードを何枚も作るのは思わぬマイナス面もあります。カードローンをはじめとする他のローンを新規契約する際に、持っているカードの枚数が多いと審査に落ちる可能性があるのです。今の時点でお金を1円も借りていなかったとしても、枠自体は存在しています。そのため、金融業者はカードローンを契約した直後にキャッシング枠いっぱいまで現金を引き出されてしまう可能性を危惧するのです。

不正利用の危険性もあるので、使わないクレジットカードは解約してしまうのがオススメです。また、キャッシング枠だけ0円に設定してもらうことも可能なので、今後ローンの契約を考えているのであればクレジットカードの契約内容を見直すことが必要でしょう。

カードローンキャッシングと総量規制の関係

キャッシングと言えばクレジットカードを使ったものだけではありません。銀行や消費者金融が提供しているカードローンもキャッシングに分類されるのです。それでは、カードローンのキャッシングも総量規制に関係あるのでしょうか?ここでは、その関係について解説していきます。

結論から伝えると、消費者金融のカードローンは総量規制の対象となります。そもそもの法律が貸金業者を対象として作られているため、消費者金融は当然該当するのです。限度額300万円と謳っているカードローンに申し込んだとしても、借りられるお金は年収の1/3までとなります。もちろん、すでにクレジットカードでお金を借りていたとしたら、その分も含めて年収の1/3までです。

わかりやすい例に例えると、年収300万円の人は消費者金融のカードローンを使って100万円まで借りる事ができます。しかし、クレカで30万円借りていたとすると、限度額は100万円から30万円引かれて70万円までとなります。

そして、銀行カードローンは総量規制の対象外となります。適用される法律が銀行法であるからこのようになっているのですが、もちろん審査による上限というものが存在します。その目安とされるのが、やはり年収の1/3と言われています。限度額500万円と謳われているカードローンに申し込んでも、申込者の年収が300万円しかなければ審査によって限度額を100万円にされる可能性が高いのです。

しかし、消費者金融との違いはそこに法律による厳格な規定があるかどうかです。つまり、現在クレカでお金を借りていたとしてもそれをどういう扱いにするのかは銀行の判断に委ねられているのです。例えば、年収300万円の人が現在30万円を借り入れしている状態で銀行カードローンに申し込んだら、限度額が70万円になるか100万円になるかは銀行の判断次第なのです。

そもそも総量規制って何?

前述しましたが、総量規制とは「返済残高が年収の3分の1を超えている状態で、新規の借り入れ契約を結ぶことができない」という法律です。これは、2010年に貸金業法によって、金融機関の中でも貸金業者向けに発足されました。借り入れ対象者は個人に限定されています。つまり、貸金業者と個人のお金の貸し借りにおける規制です。

貸金業者とは「消費者金融、信販会社、クレジットカード会社」などのことを指します。貸金業者以外の金融機関である「銀行、信用金庫、信用組合、労働金庫、農協」などは、総量規制対象外です。

きっかけは、消費者金融(武富士など)による高金利の過剰な貸し付けに歯止めをかけるためです。返済不可能と見られる個人に、ほとんど審査なしの状態で貸し付けを行ったため、最終的に高額負債を抱え込む人をたくさん出してしまいました。自己破産する人や自殺する人も急増しました。このままでは日本の治安も悪くなってしまいます。そんな中うち出された対策が“総量規制”です。

借り入れできるお金を年収の1/3としたのにも根拠があります、国の試算によると、消費者金融の利用者はおおむね年収600万円以下であることが分かっています。その年収から割り出した月収を基に、予想される生活費や家賃を引くと大体15%程度になります。そのため、月収の15%程度であれば生活を犠牲にする事なく借金の返済ができると考えられているのです。年収の1/3程度であれば、金利18%を元利均等払いで返済しても無理なく3年で完済できるという試算が出ているのです。

お金を借りる側にとっては、総量規制は人を縛るだけの法律と思われがちです。しかし、長い目で考えれば、治安をよくするための有効な改革と言えます。その証拠に総量規制の発足後には、自殺者や自己破産をする人が急激に減少したことも事実です。

まとめ

キャッシングと総量規制との関係について解説しました。ざっくりとですが、最後に内容をもう一度見直してみましょう。

  • クレカのショピング枠は総量規制対象外
  • キャッシングの限度枠が対象でなく返済残高が対象
  • クレジットカードの枚数が多いと審査に悪影響
  • 総量規制対象外のローンもある

クレジットカードは「割賦販売法」と「貸金業法」の2つが適用されている非常に分かりにくい内容です。そのため、ショッピング枠は総量規制の対象外、キャッシング枠は対象というねじれが発生しています。他のローンを契約する際、審査で確認されるのはキャッシング枠をいくら使っているかです。そのため、できるだけショッピング枠を積極的に使うことをオススメします。

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