キャッシングと住宅ローンは、全く別物と考えるべきか、それともそれぞれの審査に影響するのか、いったいどちらが正解なのでしょうか。この点を掘り下げてみると、相互関係があることがわかります。契約次第では、メリットにもデメリットにもなり得ます。事前にノウハウを得ることで人よりもお得な融資を受けることが可能です。

まずは、キャッシングと住宅ローンの審査への影響について解説します。ちなみに、ここでのキャッシングとは、【クレジットカードのキャッシングとカードローン利用】を指します。キャッシングしていると「ローンを組むのが難しいかもしれない」と思ってしまい、一歩を踏み出せずにいる方も少なくないでしょう。しかし、間違って解釈してはいけません。

今現在、キャッシングや他のローンの返済が全くない場合、審査ではプラス評価されることに違いありません。しかし、キャッシングでお金を借りているだけで審査が不利という解釈は誤解です。その証拠に、キャッシングしている人が住宅ローンを組めないのなら、ほとんどの人がローンを組むことができません。

では、具体的にクレジットカードやカードローンの利用で、どのような状況になると審査で不利となってしまうのでしょうか。また、どのようなことを事前に改善すれば審査に通過する可能性が高くなるのでしょうか。少しでも有利に審査を受けるための方法について詳しく解説します。

キャッシングが住宅ローン審査にもたらす影響は?

住宅ローンを組む際には、当然ですが審査が必要です。その際は、今現在キャッシングやローンなどの返済残高がどのくらいあるのかが、個人信用情報機関(CICなど)の信用情報に基づき照合されます。この信用情報は、加盟している金融機関なら全ての会社が共有することができます。

例えば、A社のローンに申し込んだ際に、A社と全く関係のないB社のローンの申し込みから返済記録までが発覚してしまいます。つまり、金融関連の【申し込み、契約、借り入れ、返済(遅延情報など)】までの全ての情報が、全然関係のない金融機関にも照合されてしまうのです。例えば、下記のような情報が共有されます。

  • 過剰な申し込みをしていないか
  • 複数の金融機関と契約していないか
  • 返済遅延の履歴が残っていないか
  • 債務整理の履歴が残っていないか

これらの記録が発覚した場合、「信用情報にキズが付いている状態」と判断されます。“過剰な申し込み”については、半年~1年ほどの期間で記録が抹消されます。“複数の金融機関との契約”については、何社かを集中して完済したりまとめたりすることで、事前に借り入れ件数を減らすことができます。“返済遅延の履歴”は、金融業者によってもマチマチですが2~3か月の遅延が続くと記録されます。返済遅延の記録は、消費者金融で1年、銀行で5年間経過すれば抹消されます。

また、もっとも重いとされるキズが“債務整理の履歴”です。債務整理は、「ブラックリストに載る」という言葉でも知られます。【自己破産、任意整理、個人再生、特定調停】などの種類があります。それぞれ時間が経過すれば、返済遅延などと同じように記録は抹消されます。ただし、自己破産なら5~10年間、任意整理なら最長5年間など、抹消するまでの期間が長期となります。

このように、クレジットカードやカードローンを利用しているだけで審査落ちすることはありません。しかし、返済遅延からはじまる“金融事故”の記録が発覚すると、住宅ローンの審査には通過できません。では、次に審査に通過したもしくは落ちた事例をもとに、審査基準について掘り下げて解説します。

住宅ローンの審査基準って?

審査に通過するための審査基準にはどのようなものがあるでしょうか。実際に審査に通過したケースと落ちたケースの過去の事例から探ってみましょう。

審査に通過した例

  • すでに自分名義の土地を所有していた
  • 短期間で返済が終了するほどの貯蓄があった
  • 安定した高額収入があった
  • 間接的に仲介を通してローンを組むことができた(不動産など)

住宅ローンは、ローンの中でも最も高額融資です。そのため、審査が他のローンよりも厳しいことは言うまでもありません。数千万円の融資となるので当たり前と言えば当たり前です。そんな中、審査通過への大きな強みが“既存の担保や貯蓄”です。特に、自分の土地を所有している方ならば、定住する安定面も含めてプラス評価となります。また、貯蓄を元に(頭金など)少ない借り入れで安定したローン返済を組む場合も、融資金額が少ないため審査に有利です。

では、既存の財産が無い方に対してはどのような基準があるのでしょうか。その場合、勤務条件が判断ベースとなります。そのため、【勤続年数、役職、年収】などの明確な申告が求められます。もちろん、勤続年数が多い、役職が高い、年収が多いほど審査には有利です。また、具体的にどのくらいの融資が可能なのか気になるところです。一般的に住宅ローンの場合、年収の5倍以下かつ物件価格の80%以下の借り入れが相場です。

例えば、年収が500万円の場合、年収の5倍にあたる2500万円までならローンの審査に通過しやすいと考えられます。ただし、希望物件が2500万円の場合、80%にあたる2000万円以下の融資が相場と考えられます。

審査に落ちた例

  • ローンの返済額に応じた年収がなかった
  • 定年退職までにローンを完済できないと判断された
  • 債務整理をした履歴が抹消されていなかった(
  • 他に返済中のローンがあったので返済能力に欠けると判断された
  • 転職して間もないときに申し込んでしまった
  • 自営業者なので安定収入という面で厳しく評価された

このように、返済に支障が生じると判断された場合、審査が不利になります。また、過去に債務整理をした履歴が抹消されていない場合、どう転んでもローンの審査には通過できません。

債務整理をすると、個人信用情報機関(CICなど)の共有情報に記録されます。その記録は、ある期間が経過すると抹消されます。ただし、期間が経過しても中には抹消されていないケースもあります。抹消されているかどうかは、個人信用情報機関で確認することが可能です。ローンに申し込む前には確実に確認することをおすすめします。

住宅ローンは総量規制の対象にならない

ここでは、お金を借りる際の規制について解説します。例えば、代表的なものに“総量規制(そうりょうきせい)”という法律があります。総量規制とは、“個人への貸し付けが年収の1/3以上になってはいけない”というものです。

これは、金融業者それぞれの借り入れが1/3以上にならなければいいというものではありません。返済中のすべての残高が対象です。つまり、年収が300万円の方で、すでに借り入れが100万円あった場合、それ以上の融資が禁止されます。

キャッシングでお金を借りる場合はこの総量規制を気にしなければいけませんが、住宅ローンは総量規制対象外です。年収以上のお金も借りることが可能です。

つまり、キャッシングでお金を借りていることと、住宅ローンを組むことは別問題になります。しかし、上記で紹介している通り、キャッシングの経歴は住宅ローンの審査で見られる部分ですので、現在総量規制までキャッシングを利用している人は注意しましょう。

住宅ローンを通すならカードローン、キャッシングはどうしたらいいの?

住宅ローンの審査を受ける際に、現在の返済状況や他の金融機関との契約状況が確認されます。その場合、もちろん返済残高は少ない方が有利です。また、見落としがちなのが契約しているカード(クレジットカードのキャッシング、銀行のカードローン、消費者金融のカードローンなど)の枚数も照合されます。

この場合、たとえ契約しているカードの利用がなくとも、契約数が多ければ審査が不利になります。これは、現在使用していなくとも、将来的に借り入れしてしまう可能性があると判断されるためです。そのため、返済残高がいくらかと同時に借り入れ限度枠がどのくらいあるのかも重要視されます。

そこで、審査を有利に運ぶためには、使用していないクレジットカードやカードローンなどを解約することがポイントです。特に消費者金融のカードローンと契約している場合、審査が大きく不利になります。なぜなら、消費者金融から借り入れしていることは、よほどお金に困っていると判断されてしまうためです。できれば、消費者金融の返済が残っている場合は優先的に完済し、カード自体も解約してしまいましょう。

折角契約したカードを破棄してしまうのは非常にもったいないことです」。しかし、一生に一度かもしれない大口ローンと契約するためです。ここは惜しまず、審査を有利にする対策として積極的に取り組みましょう。

住宅ローンの審査に通過するためには?

住宅ローンの審査を受ける際には、大きく二つの手順が考えられます。仮審査を受ける、いきなり本審査を受ける】の二種類です。

仮審査とは、事前審査のことです。仮審査に通過したとしても本審査で落ちてしまう可能性があります。そうであれば、仮審査の意味とは何でしょうか。仮審査を受けても受けなくとも結局本審査で決定するのなら、直接本審査を受けた方が融資までの時間を短縮できると考える方もいるでしょう。では、実例を参考に“仮審査を受けた人が仮審査をすすめる理由”に注目します。下記が主な理由です。

  • 借り入れ可能金額を確かめてから購入物件を選びたい
  • どのような家を建てるかのものさしにしたい(予算確認)
  • ローンを組めるかどうかを確認したい
  • 何社かの見積もりを比較し、より有利な金利でローンを組みたい

住宅ローンはいくら借りれるか以前に、ローンを組めるか組めないかが問われる高額ローンです。仮審査の結果に基づき購入できる物件を見定めたり、ローンを組めるかどうかを確認するバロメーターに活用している方も少なくありません。

仮審査に申し込むことによって、審査に通過するための的確な借り入れ希望額の目安を把握することができます。自分の身丈を事前に知った上で審査に申し込めば、より審査に通過しやすくなるメリットがあります。

逆に、住宅ローンがあるとキャッシングは利用できるの?

総量規制のことについて前述しましたが、逆にキャッシングを利用する際には住宅ローンは、総量規制の対象とされるのでしょうか。答えは“ノー”です。

年収が300万円の人で、住宅ローンなどの返済残高が200万円以上あったとします。この場合、総量規制から判断すればキャッシングの審査には絶対パスできません。しかし、キャッシングの審査を行う場合でも、住宅ローンの返済残高は総量規制の計算には含まれません。

住宅ローンは住宅自体を担保にすることができます。その信頼性も含め、規制対象外とされています。ただし、法律的には対象外であっても、最終的に審査する側が「返済能力に欠ける」と判断することがあります。その場合、審査結果に従わざるを得ないということも注意点として補足しておきます。

キャッシング利用している金融機関での特典

銀行で住宅ローンを組めることは、誰もが願う最高のメリットです。しかし、それだけではありません。

例えば、住宅ローンを組んだあとに生活でのちょっとしたお金の調達にカードローンの申し込みが便利です。その際に同行でカードローンに申し込んだ場合、金利が優遇されることがあります。一般的に2%から中には5%も金利が引き下げられるケースもあります。これをうまく使わない手はありません。

もし、他の銀行でカードローンの契約をしているなら、同行への借り換えもおすすめです。クレジットカードでキャッシングするなら、住宅の返済を組んでいる銀行のカードローンに申し込むのがお得です。ですが、どの銀行でも金利引き下げの特典を提供しているわけではありません。申込む際にはそれぞれの相互関係を確認し、どこの銀行に申し込めば得なのかを吟味しましょう。

また、高額融資の返済を抱えていると、カードローンの審査が不利になるのではないかと思ってしまいます。しかし、住宅ローンを組んでいる人がカードローンに申し込んだ場合、審査で有利とされるケースがあります。なぜなら、住宅ローンを組んでいること自体、安定収入や一定の場所に基盤を固めて生活していることを意味します。つまり、信用がある(返済能力がある)人と見なされるため審査でプラス評価されます。

キャッシングと住宅ローンの併用で注意すること

キャッシングと住宅ローンを併用する際の注意点、ここでは“申し込むタイミング”についてもう一歩掘り下げて考えます。

住宅ローンを組む際には、いくら返済残高が残っているのかが、審査基準として重要です。つまり、申し込む際には、審査へのデメリットを回避するため、今あるキャッシングの返済をできるだけ少なくする必要があります。

それに対し、住宅ローンをすでに組んでいる人がキャッシングに申し込む場合、逆にプラス評価されるメリットがあります。前述しましたが、“住宅ローンを組むことができる人”イコール“返済能力がある人”と見なされるためです。ローンを組んでいるそのこと自体が、信用情報の手助けとなります。

これらのことから、まずは返済が少ない時に住宅ローンを組むのが先決です。それまでは大変かもしれませんが、生活費をなるべく切り詰めて消費をおさえる努力が必要です。そして、住宅ローンを組んでからキャッシングに申し込む、そうすれば両方の審査が有利となり一石二鳥です。くれぐれも順番を間違えないよう取り組みましょう。

また、その際には同時申し込みも問題ありません。しかし、短期間に複数の金融機関にローンを申込んでしまうと“申し込みブラック”という記録が個人信用情報機関に残ります。大口ローンを組めたからと安心していくつものキャッシングなどに申し込んでしまうと、信用情報に傷が付きます。いつどこで影響するかわからないので、なるべくなら履歴はきれいにしておきたいものです。

不動産屋と仲良くして住宅ローンを組もう!

女性が自分の城を持ちたいという欲望は男性よりも高いというデータもあるようです。そんな中、担保も貯蓄もなく旦那の収入も高給とはいえない場合、ローンを組むことに不安を感じる方も少なくないはずです。

そこで、人の力を借りることも検討しましょう。例えば、直接銀行に申込む方法のほかに、不動産屋を仲介に助けてもらえる場合があります。例えば、住宅を購入する際に他の返済が残っていたとします。返済状況によっても異なりますが、銀行に通ずる不動産屋がローンの審査に通してくれることもあります。不動産屋は、家が売れてナンボの商売です。言ってみれば持ちつ持たれつの関係なので、引け目を感じることもありません。

不動産屋を選ぶ際には、なるべく知人などからの紹介を受けること、それに加えできる限り心証をよくするよう振る舞うことも大切です。不動産屋は家を売ることも大事ですが、信用に関わることなので誰でも後押しすることはありません。審査するのは銀行側だけではないということと、常に誠実な志をもって取り組むことが重要です。

最後に、もうひとつ審査で重要視されていることがあります。ズバリ“健康状態”です。キャッシングなどの審査ではあまり大きく取り上げられる条件ではありません。しかし、住宅ローンの場合、数十年に渡る長期返済が背中合わせです。そのため、日ごろからの健康に気遣うこともローンを組むための大きなポイントです。

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